白内障手術の際に使用される眼内レンズには大きく2種類があります。
(1)単焦点眼内レンズ:ピントの合う範囲が遠方か近方のいずれかに限られているため、遠方か近方を見るときのどちらかは眼鏡が必要となります。こちらは保険適応となります。
(2)多焦点眼内レンズ:遠方と近方、レンズの種類によっては中間にもピントが合うため、眼鏡の依存度を減らすことができます。当院では自由診療、選定療養のどちらにも対応しております。詳細につきましては、医師・スタッフにお問い合わせください。
多焦点眼内レンズは患者様のQOVを高めるレンズ。
多焦点眼内レンズは100%の患者様が眼鏡が不要になるというレンズではありません。ご自身のライフスタイルに合わせた見える焦点(ポイント)を増やすことで、眼鏡の依存度を減らし、術後のQOV*を高めるレンズです。
当院では医師や視能訓練士が患者様のご要望をじっくりお聞きし、患者様に最適な眼内レンズ選びのお手伝いをさせていただきます。
*QOV(Quality of Vision):視覚の質。QOL(Quality of Life:生活の質)を実現させるための重要な要素。
自由診療とは
健康保険等の公的な医療保険制度が適用とならない全額自己負担の診療のことを指します。当院では、多焦点眼内レンズを使用した白内障手術を自由診療にて行っております。使用する多焦点眼内レンズは、国内で認可されているものから、日本国内では未承認ではありますが、性能や安全性についてはすでにヨーロッパやアメリカで証明されている、最新の眼内レンズを扱っております。
その中でも、Fine vision(3焦点)、LENTIS Mplus(分節状屈折型)を中心に、国内外で実績のある最新で最高水準の多焦点眼内レンズをご提案させて頂いております。全額自己負担となりますが、可能な限り眼鏡をかけずに遠くから近くまでしっかり見たい、若いときの自然な見え方になるべく近づけたいという方には、大きなメリットがあります。
自由診療費用
乱視なし: (一律) 片眼¥500,000(税込) 両眼1,000,000(税込)
乱視あり: (一律) 片眼¥550,000(税込) 両眼1,100,000(税込)
術前の検査・診察から術後3ヶ月の診察までの費用になります。
※手術費用、その間にかかるお薬代も含みます。
選定療養とは
追加費用を負担することで保険適応の治療と保険適応外の治療を併せて受けることができる制度です。
そのため、白内障手術は通常の保険適応となり、多焦点眼内レンズ(国内承認)を選択することで増える費用のみを自費にて追加負担いただければ手術が受けられます。
注)今までの「先進医療」という制度では、多焦点眼内レンズの費用以外の部分である白内障手術自体も保険適応外となり、全額自費(もしくは先進医療特約保険に入られている方は、保険会社からの給付)となっていました。
選定療養費用(片眼)
多焦点眼内レンズラインナップ
※この表はメーカーが公表している内容をもとに、当院でOPEを行った患者様の感想や、手術データを加味して作成した内容になります。
他院とは多少異なる点もございますので、あらかじめご了承の程よろしくお願いいたします。
※◎や○が付いている場合でも、個人により眼鏡が必要なケースもございます。
当院で扱っている代表的な多焦点眼内レンズ
Acriva Trinova(自由診療)
最大の特徴は92%の光が遠方~近方に焦点が合っており、光学ロスが8%ととても少ないため、高い見え方の質を実現することができます。これまでの回折型の2焦点や3焦点レンズより、ハロー(光の輪状散乱)グレア(光のにじみ)が軽減されるような仕組みになっています。レンズの光学エッジが他の回折型レンズのようなシャープエッジではなく、より滑らかな正弦波同心円パターンとなって、ハロー・グレアが少ない構造になっています。更に焦点深度を広げる機能を追加して、遠方~近方までスムーズに見えるように設計されています。
FINE VISION(自由診療)
遠方と近方、遠方と中間の2種類のレンズを組み合わせた特殊な構造を採用し、遠方・近方・中間の3か所にピントが合う仕組みの眼内レンズです。まさに、遠方・近方の視力を落とさず、中間距離にもピントが合わせることができるのが大きな強みです。材質は親水性アクリルでブルーライトと紫外線をカットし、レンズ構造はアポダイズ回折型で非球面デザインとなっています。3焦点に焦点が合い、明視域も広い為、眼鏡を必要とする機会を減らしたいという方に適した多焦点眼内レンズの1つです。当院でも手術実績が多く、術後成績がとても良好なレンズです。
LENTIS Mplus(自由診療)
遠方部分と近方部分に境目がない構造になっており、遠方視から近方視までがスムーズに見ることができる仕組みになっています。2焦点ではありますが、分節状屈折型というタイプで上方部(遠)~下方部(近)にかけて少しずつ度数が移行する仕組みで、その移行部により、ある程度中間の見え方をカバーすることができます。また乱視用は、0.01D刻みの完全オーダーメイド型となり、ご自身にのみ合うレンズを作製することが可能になります。こちらのレンズも当院では多くの手術実績があり、他の多焦点眼内レンズでは規格のない強度近視の方にも適応しやすいです。
Pan Optix(選定療養)
2019年7月からAlcon社より導入された国内初承認の3焦点眼内レンズです。2焦点をはじめ、焦点深度拡張型の多焦点眼内レンズは国内で承認を受けていましたが、3焦点眼内レンズはこのレンズが初めてになります。遠方視力の見え方の質を最大限落とさず、中間距離(60cm)~近方距離(40cm)にも焦点が合う快適な見え方の提供が実現。PCやスマートフォンを使った作業、料理など家事を行うといった生活圏の距離がとても容易になりました。レンズの光学部である回折ゾーンは4.5mm幅と瞳孔の大きさ、光の照明といった条件への依存を最小限に抑えていますので、各距離で質の高い見え方、レンズ自体の持つ能力を十分に発揮してくれます。
Symfony(選定療養)
エシェレット回折デザインを採用することによりハロー・グレアを抑え、眼全体の色収差を補正するデザインで良好なコントラスト感度を得ることができ、遠方から中間まで自然な見え方を実現したレンズです。従来の多焦点眼内レンズは中間距離にピントが合いづらいという欠点がありますが、焦点深度を拡張することにより明視域が広がり、中間距離にもピントが合うように設計されています。ただし、読書など近距離作業30~40cmを良好に見ることはできませんので、車の運転やゴルフなど、遠方をはっきり見たい方に適したレンズと言えます。
多焦点眼内レンズは、種類に応じてそれぞれにメリット・デメリットがあります。必ずしも10~20代の時期と同じ視覚を得ることはできないものの、それに近いもの、またはメリットをうまく活かすことにより、お若いときには裸眼では見えなかった焦点も得ることできます。当院では、白内障手術が決定して予約検査をする際、医師および眼内レンズの専門知識を持つ視能訓練士が、じっくり時間をかけて丁寧にご説明させていただきます。その際、患者様がレンズの特性を十分ご理解の上で、自分にあった多焦点眼内レンズをご希望された場合にのみ、多焦点眼内レンズを選択いたします。ご不安やご不明な点などがありましたら、何度でもお気軽にご相談ください。
見え方の違い
レンズ構造が複雑なため、単焦点眼内レンズに比べると、暗所で光が散乱し、光の周辺に輪が架かって見える現象(グレア・ハロー)やコントラスト感度の低下が起きる場合があります。